ノンアルワインの造り方は大きく二通り
ノンアルコールのワインを手に取ったとき、「これはどうやって造っているのだろう」と気になったことはないでしょうか。結論から言えば、造り方は大きく二通りに分けられます。一つは、普通のワインをいったん造ってから、アルコールだけを取り除く「脱アルコール」です。もう一つは、ブドウ果汁を発酵させない、あるいは発酵をごく短くとどめて、最初からアルコールをほとんど作らない方法です。この記事では、二つの違いと、ラベルを見るときの手がかりを整理します。特定の商品を推奨するものではありません。
前提として、日本の酒税法は、アルコール分1度以上の飲料を酒類と定めています。アルコール分が1度未満であれば、酒税法上の酒類にはあたりません。そのなかで、商品説明にアルコール分0.00%と明記しているものもあれば、0.5%のようにごく微量を含むものもあります。製法の違いは、この数値の幅や、味わいの傾向とも関係しています。
造ってから取る: 蒸留、スピニングコーン、膜
脱アルコールの代表的な方法が、減圧して沸点を下げた状態で行う真空蒸留です。英国の工学系団体の解説によると、減圧するとエタノールの沸点が下がるため、香気成分を多く残したまま、アルコールだけを先に気化させられます。ワインの脱アルコールで特に普及している方法とされています。熱を使う方法には、香りの損失や味の変化を招きやすいという課題があることも、同じ解説で指摘されています。
スピニングコーン(回転円錐)カラムは、減圧下で液体を薄い膜にして流し、下から蒸気を入れることで、低い温度でアルコールと香りを気化させる装置です。ニュージーランドのワイナリー Giesen は、この装置を使って、ワインを香り、ボディ、アルコールに分けて、アルコールだけを取り除いていると紹介されています。香りを先に別に集めておき、アルコールを取り除いたあとの液体に戻す、という工程を組みやすいのが特徴です。
膜を使う方法には、逆浸透(RO)膜や透析があります。逆浸透膜は、水やアルコールのような小さな分子を通し、香味のもとになる大きな分子を通さない性質を利用します。解説では、ビールの脱アルコールでより多く使われているとされています。熱を使わないため、熱による変化は抑えられますが、装置や運転のコスト、処理後の味の調整といった課題があります。装置メーカーが逆浸透法を推奨する事例もありますが、これはメーカーの見解であり、実際の品質は工程全体の設計に左右されます。
どの方法でも、アルコールを取り除くと、液体の厚みや香りが失われやすくなります。そこで、回収した香りを戻したり、別の原料を加えたりして味を整える工程が必要になります。つまり、脱アルコール型のノンアルワインは、「引き算」のあとに「足し算」で仕上げる飲み物だといえます。
造らずに仕上げる: 発酵させない、調合する
もう一つの考え方は、アルコールを作らない設計です。海外の業界記事によれば、フランスのノンアルコールワイン Opia は、ブドウを収穫して破砕し、果汁を取り出したあと、発酵させない製法をとっています。タンクの温度管理で、酵母が糖をアルコールに変えることを防ぎ、保存料を使わずに殺菌も行うと紹介されています。日本の輸入元は、パシフィック・ヨウコと伝えられています。
この方法では、脱アルコールの工程に伴う香りの損失は避けられますが、糖分が残るため、甘味が強く感じられやすくなります。酸味や渋み、苦みで甘さを調整し、食事に合う味わいに仕上げるのが課題です。国内では、メルシャンの「贅沢ワイン気分 スパークリング」が、特許技術の「特殊ブドウ果汁」を使い、ワインらしい余韻や複雑味を目指した商品として2024年9月に発売されました。特殊ブドウ果汁の詳しい工程は公開情報では確認できませんが、原料の設計で味わいを組み立てる方向の例として参考になります。
果汁、茶、ハーブ、スパイス、酸味料などを調合して、ワインらしい味わいを組み立てる方法もあります。この場合は、ブドウだけでなく、さまざまな素材を組み合わせて、酸と渋みと香りのバランスを作ります。調合型は、設計の自由度が高い反面、原材料の種類が多くなる傾向があります。
味わいの傾向をどう読むか
製法の違いは、味わいの傾向にも影響すると言われます。ただし、実際の味は、使用するブドウの品種や産地、仕上げの工程、炭酸ガスの有無などによって大きく変わるため、製法名だけで判断することはできません。たとえば、脱アルコール型では、元のワインの品質が出来上がりに大きく影響します。酸味やタンニン(渋み)の強いワインを脱アルコールすると、アルコールで和らいでいた酸味や渋みが前に出やすくなる、と説明されることがあります。
非発酵型では、ブドウ果汁本来の甘みが残りやすく、ジュースに近い印象になりやすいとされます。その分、酸味や香りを調整し、食事に合わせやすくする工夫が求められます。スパークリングタイプでは、炭酸ガスの泡が味の輪郭を作る役割を果たします。メルシャンの「贅沢ワイン気分 スパークリング」は290mLの缶で、泡のあるタイプとして2024年9月に発売されました。
味わいの評価は人によって異なるため、このコラムでは良し悪しの判断をしません。気になる商品があれば、まず少量の容量から試して、自分の食事や場面に合うかどうかを確かめる方法があります。専門のEC店舗や飲食店では、数種類を飲み比べられる場が用意されている場合もあります。
ラベルで確認したい三つの点
製法の細かな工程は、多くの商品で詳しく公開されているわけではありません。それでも、購入前にラベルや公式サイトで確認できる項目があります。
- アルコール分の数値: 0.00%なのか、0.5%などの微量を含むのか。運転や服薬、妊娠中などの場面では、数値の確認が欠かせません。
- 原材料: ブドウ果汁の割合、香料、甘味料、酸味料などの有無。製法の方向性を推測する手がかりになります。
- 20歳以上を想定した旨の案内: サントリーが「のんある酒場」について、あくまで20歳以上の方を対象につくられた商品と案内するように、事業者が使い方の想定を示している場合があります。
なお、味わいについては、人によって感じ方が異なります。この記事では、どの製法が優れているかという評価はしません。脱アルコール型は「ワインから出発した味」、非発酵型は「ブドウ果汁から出発した味」、調合型は「設計から組み立てた味」という、出発点の違いとして理解しておくと、商品説明を読みやすくなります。
まとめ: 出発点の違いを知ると商品説明が読みやすくなる
ノンアルワインの造り方は、造ってから取る脱アルコール、発酵させずに仕上げる非発酵、素材を組み立てる調合の三つに整理できます。脱アルコールには真空蒸留、スピニングコーン、逆浸透膜といった技術があり、いずれも香りの扱いが鍵になります。非発酵や調合は、糖分や甘味の調整が課題です。
製法の違いは、味わいの傾向や、アルコール分の数値、原材料の構成にあらわれます。当サイトでは、ノンアルワイン・ビールの製法と脱アルコール技術で、各技術をさらに詳しく整理しています。また、主要ブランドの比較表では、各社の製法の公表状況を事実項目で並べています。あわせて参照してください。
