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SMART DRINKING REPORT

ノンアル・ローアル市場の全体像

酒税法の線引きから国内市場の推計、スマートドリンキングの意味、プレイヤー構造まで、全体像を公表資料で整理します。

リネンのテーブルクロスに並ぶノンアルコールのビール、ワイン、モクテルのボトルとグラスを真上から見た様子

酒税法が引く線: アルコール分1度の意味

最終更新日:

本ページの数値は、メーカーの公表資料、官公庁の公開資料、報道で確認できたものに限っています。確認できなかった項目は書かず、「公式サイト参照」としています。

ノンアルコール飲料やローアルコール飲料の市場を理解するとき、最初に押さえたいのは「どこからがお酒なのか」という線引きです。日本の酒税法は第2条で、酒類を「アルコール分1度以上の飲料」と定めています。条文は、薄めてアルコール分1度以上の飲料とすることができるものや、溶解してアルコール分1度以上の飲料とすることができる粉末状のものも酒類に含めています。さらに酒類は、発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類、混成酒類の4種類に分けられています。

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この定義から導かれる整理は単純です。アルコール分が1度未満の飲料は、酒税法上の酒類にはあたらず、清涼飲料水などの食品として扱われます。つまり、店頭に並ぶ「ノンアルコール」と呼ばれる飲料の中には、アルコール分が0.00%と表示されたものもあれば、1%未満の微量のアルコールを含むものもあります。ビール系飲料の市場で主流のノンアルコールビールテイスト飲料は、各社の商品ページで0.00%と案内されている商品が中心ですが、0.5%のように「微アルコール」と呼ばれる区分の商品も2021年以降に登場しました。

国税庁は、酒類に関する税務の解説や手続きの案内を公開しています。販売や提供の場面で酒類に該当するかどうかが問題になる場合は、商品のアルコール分の表示を確認し、不明な点は所轄の税務署に確認することが基本です。当サイトでは、制度の細かな運用ではなく、市場を読むための前提として「1度」という線があることを共有しておきます。

この線引きは、日本以外の国では異なります。たとえば英国では、政府のガイダンスが、アルコールを除去した飲料に「alcohol free」と表示できる上限を0.05%と整理し、0.05%を超え0.5%以下を「de-alcoholised」と呼ぶ区分を置いています。この表示は法律ではなく任意のガイダンスで、アルコール分を0.5%に引き上げる案が協議の対象になったことも公表されています。同じ「ノンアル」という言葉でも、国によって指している範囲が違うことが分かります。海外のノンアル商品を日本で見かけたときは、本国での呼び方と日本での扱いが一致するとは限りません。

そのため、国内の市場レポートでは、ノンアルコールの区分を「0.00%」と「1%未満」に分け、さらに3%前後までを含む「ローアルコール」を別の枠として捉えると、各社の資料を読み比べやすくなります。次の章では、こうした用語の整理から始めます。

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用語を整理する: スマートドリンキングとソバーキュリアス

市場の話題で頻繁に出てくる言葉が、スマートドリンキングとソバーキュリアスです。スマートドリンキングは、アサヒビールが推進している考え方で、同社の公式ページは「お酒を飲む人も飲まない人も、みんなで楽しめるよう、時と場に合わせた自然な飲み方」を指すと説明しています。飲酒を減らすことや断つことを求める言葉ではなく、飲む量や度数、場面を自分で選べる状態を目指す点が特徴です。

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同ページによると、日本人のうち、お酒を飲む人は約4,000万人、飲まない人は約5,000万人とされ、両方を合わせた約9,000万人を顧客として捉えています。具体的な取り組みとして、2021年8月からビール系飲料、RTD(栓を開けてそのまま飲める缶入りの酒類)、ノンアルコール飲料のパッケージに純アルコール量(g)の表示を始め、2023年には全商品へ広げたと記載されています。また、2025年までにアルコール分3.5%以下のアルコール飲料とノンアルコール飲料で、ビール系飲料、RTD、ノンアルコール飲料の合計販売容量の20%以上を目指すという目標が示されています。

ソバーキュリアス(sober curious)は、英語圏で広がった言葉で、「しらふでいることに好奇心を持つ」という意味合いです。お酒をやめる人だけでなく、体調や予定に合わせて飲まない選択を試してみたい人も含む点に特徴があります。日本語の市場レポートでは、スマートドリンキングとほぼ同じ方向性の消費行動として並べて語られることがあります。ただし、前者は企業が示した事業上の提案であり、後者は生活者側の姿勢を表す言葉ですから、出どころが異なる点は区別しておく必要があります。

「ノンアル」「微アル」「ローアル」「低アルコール」という言葉も、使う人によって範囲が揺れます。このサイトでは次の整理で用います。ノンアルコールは、アルコール分が0.00%と表示された飲料、もしくは1%未満の飲料の総称です。微アルコールは、1%未満のうち0.5%前後のように、わずかにアルコールを含む飲料を指す場合に用います。ローアルコールは、酒類のうち3%前後など度数を抑えた商品です。度数の区分は法令上の用語ではなく、各社の商品説明やニュースリリースから読み取れる範囲での目安です。

この章の要点

酒類の線は「アルコール分1度」、スマートドリンキングは企業が掲げる考え方、ソバーキュリアスは生活者側の姿勢を指す言葉です。ノンアル・微アル・ローアルは法令用語ではなく、商品説明を読むための目安として使います。

国内市場の推移: メーカー推計で読む

国内市場の規模は、飲料メーカーが独自の定義で推計して公表しています。サントリーは2025年に公表した「ノンアルコール飲料レポート」で、2024年のノンアルコール飲料市場を約4,584万ケース(350ml缶×24本を1ケースに換算)と推計し、前年比111%、10年前の2014年から約1.6倍に広がって過去最大規模になったとしています。2025年はさらに拡大して4,730万ケースになる見通しも、同じレポートに示されています。

ここで注意したいのは、この推計の範囲です。サントリーの「ノンアルコール飲料」は、ビールテイスト飲料に限らず、レモンサワーやチューハイを模したRTD系など、アルコール0.00%の飲料全般を含む総称として使われています。ビールテイストだけの数量とは別の定義ですから、他社が公表する「ノンアルビール市場」の数字と単純に並べることはできません。市場規模の数値を引用するときは、誰が、どの範囲で、どの単位で推計したのかをセットで確認する必要があります。

個別メーカーの実績も公表されています。キリンホールディングスの2024年4月の発表では、2020年4月に発売したノンアルコール・ビールテイスト飲料「キリン グリーンズフリー」の2023年年間の累計販売数量が前年比で約1.5倍になったと報告されています。グリーンズフリーは、香料と人工甘味料を使わずに麦やホップの香りを引き出した製法を特徴としており、2023年2月から350ml缶、500ml缶、334ml小びんで全国販売されています。

需要の裾野についても調査結果が出ています。サントリーが首都圏の20〜60歳の約3万人に行った調査では、9,278人が過去1年にノンアルコール飲料を飲んだと答え、その49.1%が月1回以上、28.4%が週1回以上飲んでいたとされています。つまり、飲む人の中には、日常的に選んでいる層と、場面に応じて選んでいる層が混在しています。メーカー側の推計が拡大を示す一方で、この調査は首都圏の限られた範囲である点も、読む際の前提になります。

金額ベースの推計や、海外市場の規模を示す民間調査も存在しますが、調査会社ごとに対象範囲と算出方法が異なります。当サイトでは、一次資料で定義まで確認できた数値だけを採用し、確認できなかった推計値は載せない方針です。最新の数値は、各社のニュースリリースや決算資料で確認してください。

飲む人・飲まない人・調整する人: 需要の三つの層

ノンアル市場を需要側から見ると、少なくとも三つの層に分けて考えられます。第一は、そもそもアルコールを飲まない人です。体質、宗教、妊娠・授乳、服薬、運転や仕事の予定など、理由はさまざまです。第二は、普段は飲むものの、特定の場面ではアルコールを避ける人です。平日の夜、運転がある日、休肝日などがこの層に当たります。第三は、飲む量や度数を調整しながら、お酒とノンアルを組み合わせる人です。ローアルコールや微アルコールの商品は、この第三の層に向けた提案と位置づけられています。

厚生労働省は2024年2月に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を公表しました。同省のページでは、飲酒に伴うリスクの知識を普及し、量(ml)だけでなく純アルコール量(g)に着目して、自分に合った飲酒量を決めて健康に配慮することを目的に掲げています。純アルコール量は「摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100)×0.8(比重)」で計算でき、5%のビール500mlはおよそ20gと例示されています。飲酒の影響には個人差があるため、疾患ごとの発症リスクを参考にしながら判断するという考え方です。

このガイドラインは、飲酒を勧めも禁じもしない中立の資料です。ノンアルコール飲料の側から見ると、純アルコール量という共通の物差しが公的に示されたことで、「何gを避けたいのか」「何gまでなら飲むのか」を数字で考える環境が整ってきたと言えます。前述のとおり、アサヒビールがパッケージに純アルコール量を表示しているのも、こうした流れに沿った動きです。

なお、ノンアルコール飲料は、酒類の代わりとして20歳以上の方を想定して設計された商品が多くあります。たとえばサントリーの公式案内は、「のんある酒場」について、あくまで20歳以上の方を対象につくられた商品であり、アルコール分は0.00%であると説明しています。20歳未満の飲酒は法律で禁じられていますから、ノンアルコール飲料であっても、酒類を思わせる商品が20歳未満の方に向けて提供されることは、業界としても想定していない使い方です。

海外の動きを読むときの注意

海外では、ノンアルコールやローアルコールを指す言葉と、その基準が国ごとに異なります。前述の英国のガイダンスのように、「alcohol free」と呼べる上限が0.05%に置かれている国もあれば、0.5%未満をノンアルコールとして扱う国や地域もあります。日本の「アルコール分1度未満は酒類ではない」という整理は、国際的には緩やかな部類に入ります。

海外発のブランドが日本に入ってくる場合、輸入元が日本の表示ルールに合わせてラベルや商品説明を整えます。たとえば、フランスで造られるノンアルコールワイン「Opia」は、日本の輸入元がパシフィック・ヨウコであると海外の業界記事で紹介されています。記事によれば、このワインは、一度ワインを造ってからアルコールを取り除く方法とは異なり、ブドウ果汁を発酵させない製法で造られていると説明されています。同じ「ノンアルコールワイン」でも製法は一つではありません。製法の違いは次の章以降で詳しく扱います。

海外の市場規模については、調査会社ごとの推計が発表されていますが、定義や通貨、年次が異なり、日本国内の数値と並べて比べるのは慎重であるべきです。当サイトでは、日本語で公式に確認できなかった海外推計は掲載せず、海外の動向は制度や製法の違いを中心に取り上げます。

プレイヤー構造: 大手・ワイナリー・クラフト・専門店

国内のノンアルコール・ローアルコール市場に関わる事業者は、おおまかに四つのグループに分けて整理できます。

大手ビール・飲料メーカー

アサヒビール、キリンビール、サントリー、サッポロビールなどは、ビールテイストのノンアルコール飲料に加え、RTD系のノンアル商品、ローアルコール商品を展開しています。アサヒビールのスマートドリンキングのページには、アルコール分0.00%の商品として「アサヒドライゼロ」などが、アルコール分3.5%以下の商品として「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」(3.5%)などが掲載されています。サントリーは、公式ページで「オールフリー」「のんある酒場」「のんある気分」「まるで梅酒なノンアルコール」の4ブランドでノンアルコール飲料を構成していると案内しています。

ワイナリー・ワイン事業者

ワイン分野では、メルシャンが2024年9月にアルコール0.00%のノンアルコールスパークリングワイン「贅沢ワイン気分 スパークリング 白/ロゼ」(290mL缶)を発売し、特許技術の「特殊ブドウ果汁」を使うと説明されています。2021年6月には、ノンアルコールサングリアの「MOCK Bar」も発売されました。輸入ワインでは、前述の Opia のように、発酵させない製法のブランドが日本市場に入っています。

クラフト・地方の醸造所

岩手県一関市の世嬉の一酒造は、1995年に立ち上げたクラフトビールブランド「いわて蔵ビール」で知られ、2021年1月には砂糖を使わないノンアルコールのクラフトコーラ「こはるコーラ」を発売しました。ノンアルコールビールがスタイル別の世界大会で受賞したとも報じられています。地方の酒蔵や醸造所が、本業の技術を生かしてノンアル商品を手がける動きの一例です。

専門店・専門バー・EC

東京には、ノンアルコールとローアルコールを中心に提供する専門店が複数あります。目黒区の「Low Alcoholic Cafe MARUKU」は、ノンアルコール飲料専門のECサイトも運営し、0.0%〜0.5%のクラフトビールを10種類以上揃えると紹介されています。神田須田町の「Low-Non Bar」は、ローアルコールとノンアルコールのモクテルを提供する専門バーです。これらの事業者は、第6ページで事実項目を並べて整理しています。

四つのグループはそれぞれ強みが異なります。大手は流通網とブランド認知、ワイナリーは原料と醸造技術、クラフトは地域性と少量多品種、専門店は体験と編集力です。市場が広がる中で、これらがどう役割分担し、また重なり合っていくかが、今後の読みどころになります。

一次情報の確認先

本ページで引用した情報の確認先です。最新の内容や数値は、各リンク先で直接ご確認ください。

本サイトはノンアルコール・低アルコール飲料の市場と製法を公開情報から整理したものであり、特定の商品・店舗の推奨や健康効果の説明ではありません。アルコール度数1%未満の飲料でも、20歳未満の方の飲用や運転前の飲用を想定した商品ではない場合があります。表示・規制は各社・所管官庁の情報をご確認ください。