風味設計とAI: 公表事例を整理する
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本ページの事例は、報道、企業の発表、官公庁の公開資料で確認できたものに限っています。導入予定や実験段階の取り組みは、その旨を明記しています。確認できなかった項目は書かず、「公式サイト参照」としています。
ノンアルコール飲料の開発では、アルコールが担っていた厚みや香りの運び役を、ほかの要素で補う必要があります。そのため、味の成分を分析して設計に生かす技術に注目が集まっています。報道によると、キリンは、味わいの要素を分析し、目標とする風味に必要な成分を特定するAIを、2026年3月以降の商品への導入を計画していると報じられています。約20年分の社内の原材料データと官能評価データで学習しており、苦味が強すぎるなどの問題が出た際には、代替の原料や調整案を提示する仕組みと伝えられています。
同じ報道では、AIの支援で作られた試作品は、従来の手法で作られたものよりも、消費者テストで高く評価されたとされています。また、この技術をワインやソフトドリンクなどのカテゴリへ広げる意向があるものの、最終判断は人が行うと説明されています。この事例は、ビールを対象にしたものですが、風味の設計をデータで支援するという考え方は、ノンアルコールやローアルコールの商品開発にも応用しやすいと考えられます。
海外では、ドイツのワイナリーKatlenburgerが、AIを使って風味を開発・調整した果実ワイン系のRTD「NanoFizz」を発売し、「ヨーロッパ初のAIによるRTD果実ワインミックス」とうたったと報じられています。2026年6月の海外記事は、飲料メーカーが機械学習でレシピ開発を早め、試行錯誤のコストを減らしていると伝え、その背景として、飲酒の頻度を減らす消費者や、低アルコール製品を選ぶ消費者の増加を挙げています。
これらの事例から読み取れるのは、AIが味を自動で決めるのではなく、候補の絞り込みや原因の特定を支援する道具として位置づけられている点です。香りの成分と人間の感じ方の関係はまだ解明されていない部分が多く、最終的には人の官能評価が欠かせません。日本語で公式に確認できたノンアルコール専用のAI事例は限られているため、当サイトでは、確認できる範囲の事例だけを扱います。
飲酒量の記録とパーソナライズ
飲酒量を記録するサービスも、スマートドリンキングの一部として登場しています。アサヒビールは2022年に、LINEのログイン機能を使い、飲酒量や休肝日を記録して純アルコール量をグラフで確認できるWebサービス「飲酒量レコーディング」を始めたと報じられました。対象は公式アカウントを友だち登録した20歳以上で、初回にアルコール依存症のスクリーニングテスト「AUDIT」を受け、その後4週間記録する仕組みとされていました。現在の提供状況は、公式サイトで確認してください。
こうしたサービスの根底にあるのは、第1ページと第4ページで見たように、厚生労働省が示す純アルコール量という物差しです。量(ml)ではなく純アルコール量(g)で振り返ることで、飲み物の種類や度数が違っても、同じ単位で比べられます。ガイドラインは、自分に合った飲酒量を決めることを求めており、記録はその第一歩になります。
パーソナライズの観点では、飲む人の体質や予定、気分に合わせて、度数や飲み物を選べる仕組みが課題になります。SUMADORI Meetsのように、カクテルごとに0%、0.5%、3%を選べる店舗は、リアルな場でのパーソナライズの例です。将来的に、記録サービスや注文システムと連動して、その日の予定に合う提案を出す仕組みが考えられますが、現時点で公式に確認できた事例は限られているため、断定的には書きません。
この章の要点
AIは味の設計を支援する道具、記録サービスは純アルコール量で振り返る道具として登場しています。いずれも、最終的な判断は人が行うと説明されています。
表示と広告をめぐる制度の整理
ノンアルコールやローアルコールの飲料を売るときの表示や広告は、いくつかの制度が関わります。ここでは概要を整理します。個別の判断は、所管官庁の資料と専門家に確認してください。
景品表示法
景品表示法は、商品やサービスの品質や価格について、実際よりも著しく優良であると見せる表示や、有利だと誤認させる表示を禁じています。消費者庁がこの制度を所管し、解説資料を公開しています。ノンアルコール飲料でも、味や原料、製法、効果について、実際と異なる表示をすることは認められません。たとえば「アルコールゼロ」という言葉を使う場合は、実際のアルコール分と整合している必要があります。
食品表示・健康増進法
アルコール分1度未満の飲料は、酒類ではなく食品として扱われますので、食品表示の規制が関わります。また、健康の保持増進に関する効果を断定的に表示することは、健康増進法で規制されています。当サイトでも、ノンアルコール飲料の健康効果を断定する表現は用いません。
酒類に関する表示と広告の自主基準
アルコール分1度以上の酒類には、酒類業組合法などに基づく表示の基準があります。また、ビール酒造組合を含む9団体で構成される「飲酒に関する連絡協議会」が、「酒類の広告・宣伝及び酒類容器の表示に関する自主基準」を定め、「お酒は20歳になってから」といった表示や、広告モデル、放送時間の基準を設けていると、厚生労働省の資料で紹介されています。ノンアルコール飲料は酒類ではありませんが、実際の商品には、20歳以上の方の飲用を想定した旨を表示する例が見られます。
20歳未満の飲酒の禁止
20歳未満の者の飲酒を禁止する法律があり、成年年齢が18歳に引き下げられたあとも、飲酒の年齢は20歳のままです。ノンアルコールのビールテイスト飲料などでも、サントリーが「のんある酒場」はあくまで20歳以上を対象につくられた商品と案内するように、事業者が使い方の想定を示す場合があります。酒類を思わせる商品を、20歳未満の方に向けて販売・宣伝しないことが、業界の前提とされています。
市場の課題: 認知、価格、税制、表示
ノンアルコール・ローアルコール市場の課題として、報道や業界の議論でよく挙がる論点を整理します。ただし、具体的な数値は、一次資料で確認できたものだけを記載します。
第一は認知の課題です。0.00%と0.5%の違い、ローアルコールの位置づけなど、用語や区分が消費者に十分伝わっていない面があります。第二は価格の論点です。酒類は酒税の対象で、ノンアルコール飲料は対象外ですが、製造にかかるコストや流通の事情によって、店頭価格は商品ごとに異なります。当サイトでは、確認できた公表価格がないため、価格の比較は載せません。
第三は税制と制度の論点です。酒税の枠組みは、アルコール分1度を境に酒類かどうかを分けているため、0.5%などの微アルコール飲料は、制度上は酒類ではなく食品として扱われる一方で、アルコールを含む点で、運転や服薬の場面では注意が必要です。この点を、事業者がどう案内し、消費者がどう受け止めるのかは、今後も議論が続くと考えられます。
第四は、表示と情報開示の課題です。純アルコール量の表示、原材料、製法の説明、20歳以上を想定した旨の案内など、購入前に判断できる情報を出すことが、業界全体の信頼につながります。アサヒビールが2021年8月から純アルコール量の表示を広げ、2023年に全商品へ拡大したことは、その動きの一例です。
第五は、飲む場と文化の課題です。専門店やペアリングを出すレストランが増えても、一般の居酒屋やレストランでは、ノンアルコールの選択肢がソフトドリンクにとどまる例も多いと考えられます。飲む人と飲まない人が同じ場を共有できる環境づくりは、メーカー、飲食店、行政が連携して進める課題といえます。
これから注目したい点
最後に、公表資料から読み取れる範囲で、これから注目したい点をまとめます。第一に、メーカーの数値目標の達成状況です。アサヒビールは、2025年までにアルコール分3.5%以下のアルコール飲料とノンアルコール飲料で、ビール系飲料、RTD、ノンアルコール飲料の合計販売容量の20%以上を目指すと示しています。達成状況や次の目標は、同社の発表で確認できます。
第二に、市場推計の更新です。サントリーは、2025年の市場を4,730万ケースと見込むと公表しています。実績値が公表されたとき、拡大が続いたかどうかを確認できます。第三に、製法と開発の技術です。AIによる風味設計の導入、脱アルコール技術の進化、発酵を抑える製法の広がりが、商品の幅をどう変えるかを見守る必要があります。第四に、飲食店でのノンアルの扱いです。ペアリングやモクテルが、専門店から一般の店にどこまで広がるかが、市場の厚みを左右します。
当サイトは、これらの動向を、公式情報と官公庁の資料で確認できる範囲で追い続けます。特定の商品や店舗の推奨、健康効果の説明は行いません。
一次情報の確認先
- 消費者庁(景品表示法): 不当景品類及び不当表示防止法
- 厚生労働省: 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン
- 国税庁(酒類に関する情報): 酒税のページ
- アサヒビール: スマートドリンキング
- サントリー推計の市場規模の紹介: nippon.com
- サントリーのノンアルコール飲料に関する案内: お客様センターのFAQ
- キリンの味づくりAIに関する報道: Beer by AI - algorithms enter a Japanese brewhouse
- 飲料メーカーのAI活用に関する海外記事: Beverage Makers Turn to AI for New Flavors
