ニュースの概要
韓国国会の国政監査で、ノンアルコールビールなどに付く「0.0%」表示をめぐる問題が取り上げられた。韓国では、アルコール分が1%未満であれば「ノンアルコール」「非アルコール」と表示できる。一方で、「0.0%」「0.00%」「ゼロ」といった数字や言葉については、具体的な基準が定められていない。そのため、表示がゼロでも微量のアルコールが含まれる商品が存在しうる。さらに、監督官庁の食品医薬品安全処が、2024年と2025年には市販後の事後検査を実施していなかった点も批判された。議員側は、消費者が誤解しないよう表示基準と検査体制を強化することを求めている。
引用元: 韓国で「0.0%」表示のノンアルコール飲料にアルコール含有、規制強化を要求(Daum News)
分析・見解
「1%未満ならノンアル」という線引きが生む落とし穴
今回の問題の核心は、微量のアルコールが入っていること自体ではない。法律上の「ノンアルコール」と、消費者が思い浮かべる「ゼロ」の間に、大きな隔たりがあることだ。
韓国の制度では、1%未満なら「ノンアルコール」と書ける。ビールが4〜5%だと考えれば低い数字に見える。しかし、500ミリリットルの缶に0.9%が入っていれば、純アルコールは約3.6グラムになる。少量でも、「ゼロ」とは言えない量である。
「0.0%」は数字なのに、ルール上は飾り文句になっている
さらに厄介なのは、「0.0%」という数字表記に基準がないことだ。小数点以下1桁で表せば、0.04%の商品も「0.0%」と書けてしまう。「0.00%」とあっても、測定の限界以下という意味なのか、本当に含まれないのか、読み手には判断できない。
数字には、測って確かめた値だという印象がある。基準のないまま数字だけが独り歩きしていることが、この問題をわかりにくくしている。妊娠中の人や、依存症から回復中の人にとっては、この差が重い意味を持つ。
検査の空白が、制度の弱さを二重に見せた
表示基準があいまいでも、検査が続いていれば実態はつかめる。ところが、食品医薬品安全処は2024年と2025年に事後検査をしていなかった。基準がないうえに、確かめてもいない。制度の弱さが二重に表れた形だ。
ルールと検査は車の両輪である。片方が欠けると、結局は企業の自主性に頼るしかない。すると、厳しい社内基準を守る真面目な会社ほどコストを負い、あいまいな表示の会社が得をするという逆転も起こりうる。
海外と比べると見えてくる、韓国の基準の緩さと難しさ
海外と比べると、韓国の「1%未満」は緩い部類に入る。EUの多くの国やアメリカでは、ノンアルコール表示は0.5%以下(米国は未満)が目安だ。英国では「アルコールフリー」を0.05%以下とし、基準を一段と厳しくしている。日本では酒税法上1%未満は酒類にならないが、ビール業界の自主ルールで、ノンアルコールと名乗る商品はアルコール分0.00%を前提としてきた。
ただし、完全なゼロを法律で求めるのも簡単ではない。熟した果物やパン、発酵食品には、自然に微量のアルコールが生じる。大切なのは「ゼロ」を禁じることではなく、どの検査法でどこまでをゼロと呼ぶのかを決めることだ。今後は、0.05%や0.5%といった上限値と、数字表記の条件を組み合わせた基準が議論の中心になるだろう。
ビジネスへの影響
製造・輸入企業は「ゼロ」の根拠を数字で残す
規制が強まる前に、自社商品の実測値を押さえておきたい。ロットごとにアルコール分を測り、使った検査法と測定の下限を記録しておく。原料由来の微量分も、製造工程のどこで出るかを把握する。検査結果を取引先にすぐ出せる状態にしておくと、問い合わせにも落ち着いて応じられる。
そのうえで、「0.0%」「ゼロ」を使う商品は、社内で上限値を決めておくとよい。たとえば0.05%以下のように、海外の厳しい基準に合わせておけば、規制がどちらに振れても表示を直さずに済む。
飲食店と小売店は、客への説明ルールを先に決める
店側は、メーカー表示を信じて売るだけでは足りなくなる。妊娠中の人、運転する人、断酒中の人は、わずかな含有にも敏感だ。メニューや売り場に「微量のアルコールを含む場合があります」と一言添えるだけでも、苦情の予防になる。
従業員向けには、「ゼロと書いてあっても完全な無アルコールとは限らない」という点を、一枚の説明資料にまとめておく。聞かれたときに答えられる店は、信頼を得やすい。
韓国向けに売る日本企業は、基準が動く前提で動く
韓国へ輸出する、または現地で販売するなら、表示基準が今後変わる可能性を織り込む。包装の印刷は変更に時間がかかるため、数字表記を使わず「ノンアルコール」と書くだけにする選択肢もある。ただし、数字を外せば訴求力は下がる。
費用と信頼のどちらを優先するかは、商品の性格しだいだ。健康志向の客に売るなら、検査結果を公開してでも「ゼロ」を守るほうが、長い目では強い。第三者機関の検査証明を取っておくことは、規制が来た後にも使える資産になる。
