ニュースの概要
AB InBevは、アルコールフリービール「Corona Cero」向けに、1週間の各曜日に1本ずつ飲む想定の7本入りパックを開発した。包装大手のSmurfit Westrockと広告会社JKRが協力し、「7 Days, 7 Moments」という考え方でデザインしている。これまでアルコールフリー飲料は、運転前や休肝日といった特定の場面の代わりとして語られることが多かった。新パックはその枠を外し、平日の夕方から週末まで、日常のさまざまな場面に結び付ける狙いがある。すでにコロンビアとアルゼンチンで展開が始まっている。
引用元: AB InBev、Corona Ceroで週7本入りのアルコールフリーパックを展開(Packaging News)
分析・見解
「代わりの一本」から「毎日の一本」へ変わる位置づけ
アルコールフリービールは長く、飲めない場面を埋める代用品として売られてきた。運転する日、妊娠中、休肝日などである。この見せ方には限界がある。買う動機が「我慢」と結び付き、需要が特定の日にしか生まれないからだ。
7本パックは、この前提を組み替える。月曜は仕事終わり、土曜は友人との集まりというように、一週間の各日に役割を与える。商品を「例外の飲み物」ではなく「暮らしのリズムの一部」として見せているのである。週に7本という区切りは、飲み過ぎない安心感にもつながる。
箱の本数そのものが、飲む習慣を設計している
注目したいのは、メッセージを広告ではなく包装に埋め込んだ点だ。7という数字は、曜日という誰もが持つ区切りと重なる。箱を開けた瞬間に「今週の分」と伝わる。6本入りが多い売り場の棚では、7本の箱は数字だけで目を引く。一般的な6本や12本入りは、売る側の慣習に沿った数である。7本は、飲む人の生活の側から数を決めている。
同じ発想は他分野にもある。曜日が印字された薬ケースや、1週間分の食材を届けるミールキットがそうだ。数を暮らしの区切りに合わせると、使い続ける理由が生まれやすい。
競争の軸は、味の差から使われる場面の取り合いへ
アルコールフリービールは、味の改善がひと巡りした。Heineken 0.0のような強い競合もあり、味だけでは差がつきにくい。残る争点は、どの場面を自分の持ち場にするかである。Coronaはライムを添えて浜辺で飲むイメージが強い。Ceroがその明るさを借りて平日にも広がれば、本体ブランドの資産を生かせる。同社が低アルコール・アルコールなしの商品を伸ばす方針を示してきたことを考えると、場面の拡張は自然な一手だ。
今回、包装メーカーとデザイン会社が組んで開発した点も見逃せない。飲む場面の設計と箱の構造を一体で考えると、包装は単なる容れ物から、売り方を決める道具に変わる。
効果はまだ未検証で、再購入率が試金石になる
ただし、この仕掛けが売上を押し上げるかは、現時点では分からない。7本を買った人が翌週も買うのか、飲み切れずに余らないかが鍵になる。先行するコロンビアとアルゼンチンの結果は、他の市場へ広げる際の目安になるだろう。もう一つの問いも残る。毎日飲むことを促す訴求は、ビール全体の飲酒習慣を弱めるのか、それとも補うのか。メーカーにとっては、どちらに働くかで評価が変わる。
ビジネスへの影響
包装の数と構成を、生活の区切りに合わせて見直す
飲料や食品の担当者がまず使えるのは、「何本入りか」を売り手の都合ではなく使う人の都合で決める発想である。7本、30日分、週末用の2本といった単位は、箱を開けた時の用途を一瞬で伝える。新しい商品を作らなくても、既存の中身を詰め替えるだけで試せる。小ロットで限定販売し、通常パックと売れ行きを比べるのが現実的だ。
その際は、包装会社やデザイン会社を開発の初期に巻き込みたい。後から箱を考えると、メッセージが後付けになりやすい。
小売・外食は「曜日」を売り場の言葉にできる
小売店は、棚の説明札や陳列に曜日を使える。平日の夜、週末の集まり、運動後といった場面を並べれば、買い物客は自分の使い道を想像しやすい。外食店では、ノンアルコール飲料をメニューの端に置くのでなく、料理に合わせた「今日の一杯」として提案できる。ただし、場面の数を増やし過ぎると、かえって何の商品か伝わらなくなる。三つ程度に絞るのが無難である。
導入前に決めたい判断基準
試す前に、成否を測る指標を決めておきたい。見るのは初回の売上より、二回目の購入までの日数と、一箱あたりの消費の進み方である。既存商品の売上を食っていないか、一本あたりの単価が上がり過ぎていないかも確認が要る。効果が小さければ、箱の数や価格を変えて再度検証すればよい。大きな投資の前に、一つの地域や一つの店で数週間試す程度の規模が適切だ。
